短歌つめあわせ

過去の短歌のつめあわせです

 

『虚ろというにはあまりに甘い』
もう明日はこないよみなの涙滴で今晩消えてしまう朝焼け
情念の入り江に彼は住んでおり迷子の夢をしずめてしまう
身勝手に消費されたいときもある自分の輪郭がわからない

『かつてわたしが手にしたように』
石英と雨を集めた薄青のヴェールを纏うプロスティテュート
口を閉じなさい少女が針で指をつく決まりの邪魔になるから
小部屋からちょうど五十歩喧騒が消える隙間にすずらんが居た

『超能力三首』
いとおしい目線のあとで吐息はずるい無自覚なパイロキネシス
ぱちん、指鳴らしアポートさっきまでなかったはずの愛惜が来る
あなたはエクトプラズムの使い手で鼓動を取りだしておどらせる

『鍵穴のなかのきらめき』
アストラル何やら星の動くときこぼれた銀でつくるストール
涙滴をあつめてひかるアトマイザー月が恋しい朝は手に取る
ねえ月の遠い夜だねぼくだけにさみしいと言うなら救いたい

 

やわらかな陽光_2020/12/19